2018/03/24

愛し野塾 第163回 自傷行為・・・家族療法の可能性


近年、若い世代を中心に、あたかも流行のように拡大している「自傷行為」とは、受け入れられない大きなストレス、例えばいじめなどの社会的ストレス、トラウマ、不安やうつなどの心理的な理由を引き金に、リストカットをしたり、毒物を飲んだり、叩く、焼く、ひっかくなどあらゆる方法で自らを傷をつける行為です。その定義は、「自殺の意図を持たず直接的に自分の身体を傷つける行為」とされ、精神的苦痛を乗り越えようと非致死的な自傷行為に及ぶことを指し、直接自殺を企図とした行為ではないのですが、実際には、自傷行為と自殺には密接な関連があり、注意深い対応をしなければなりません。
2010年に行われた自治医大による国内調査(対象:1529人、平均年齢:34.2歳、女性:56.4%、男性:43.6%)では、7.1%(男性3.9%、女性9.5%)もの方が自傷経験を有し、そのうちの半数は自傷行為を繰り返していることが示されました(文献1)。最も頻度の高い年齢層は16歳から29歳で、自傷率9.9%を示し、さらに、喫煙者、虐待経験者、人工妊娠中絶者の3つは、顕著なリスク因子である可能性が見出されています。調査からも若い年齢層、そしてリスク因子を有するかたを重点的にサポートすべきだ、ということは明確ですが、現実的には、どのようなケアが最適かについては暗中模索といった状況です。
さて世界的にも、自傷行為は青少年の10%程度に認め、自殺との因果関係についても同様に報告されています。10歳から24歳までの死因の1位は交通事故死ですが、ついで多いのが自殺です。自傷経験者の自殺率は、経験のない人の10倍という高リスクであることもまた軽く受け止めてはなりません。
これまで、介入研究から、弁証法的行動療法、瞑想に基づく治療法、認知行動療法が自傷行為を繰り返す症例にやや有効という結果が、メタ解析によって得られていますが、効果は限定的であることから、治療法の開発が求められています。当事者の家族を巻き込んだ治療である「家族療法」は、自傷率を有意に低下させるという報告があり期待がもたれています。家族因子となる代表的な因子は、親子関係、養育の質、感情表出レベル、虐待経験、親同士の葛藤、親の精神衛生、で、子どもや青年の自傷行為解決への指標となります。「家族療法」は、家族生活のなかで、子と保護者との関係性を強め、絆を育むことを見据えた治療によって自傷行為をやめさせようとする方法で、理論的には、高い可能性を内包した治療法といえます。
さて、今回、イギリスで最大規模の自傷行為への「家族療法」による介入試験の結果が発表されましたので、解説したいと思います(文献2)。
<対象>
11歳から17歳で、過去少なくとも2回自傷行為があり、英国・青少年精神衛生局(CAMHS)に紹介された青少年が対象となりました。この研究では、自傷行為は、自殺の意図があったかどうかに関わらず、リストカット以外にも、薬の過剰服用、首吊り、高所からの飛び降り、自分の首を絞める、往来の激しい道路に飛び出るなど、自分を傷つける行動すべてを含みました。対象から除外条件は、自殺企図の高い、子ども保護を目的とした調査を受けている、短期の里子にでている、妊娠中、CAMHS内で通常治療中、中程度から重い学習障害がある、6ヶ月以内に別の研究に参加している、質問表に答えるに足りない英語言語力の低いこと、とされました。
家族療法は、1回1.25時間で、1ヶ月に1度、6-8回施行されました。治療風景は録画され、無作為に選ばれた画像について、治療者の適正・能力・治療内容は専門家によって評価されました。家族としての機能を維持させ、子どもと保護者の間の絆を強固にすることを目的に、保護者に対し、専門家が教育、指導を施しました。保護者には、子どもに対し、安全な環境を提供させる、ネガティブな言動はしない(自傷行為は良くない、薬物依存は危険であるなどの説教、諭しに代表される言動)、ポジティブな言動にのみフォーカスする、など、保護者自身の行動を変容させるように指導をしました。具体的には、「ロールプレイ、グループディスカッション、ホームワークアサインメント」を取り入れ、情緒に訴えかけるコミュニケーション、子どもからの対応を求められたときは、いつも必ず応えることを心がけるように指導しました(文献3)。
<一次評価項目>
グループ治療終了後18ヶ月以内の自傷行為の繰り返しによって病院受診に至ったか否か
<二次評価項目>
グループ治療終了後12ヶ月以内に自傷行為の繰り返しにより病院受診に至ったかどうか。
家族療法によって、自傷行為にかかる費用がどの程度軽減したのか、自傷行為の数、方法の変化、生活の質、うつ病、自殺企図について
 <結果>
2009年から2013年の間に、3,554人のかたをスクリーニングし、最終的に条件に合致する832人を選別し、無作為に家族療法群(415人)、通常治療群(417人)に割り付けました。平均年齢は、14.3歳で、11歳から14歳が53%、15-17歳が47%、性別は女性が89%でした。自傷行為の回数は、3回以上が89%でした。自傷行為の方法は、自分を刃物などで傷つける行為が71%、オーバードースなどの薬物乱用による自傷が22%、自殺企図のあるものが32%でした。99%以上が両親かガーディアンと暮らしており、94%がフルタイムの教育を受けていました。両群とも同様の特徴を持っていました。
<一次評価項目>
全対象者の96%の方について評価可能でした。繰り返す自傷行為を理由に病院受診した回数は、家族療法群は118回(28%)、通常療法群では103回(25%)で、2群間に有意差はありませんでした(P=0.33)。
<二次評価項目>
子供のうつ病スケール、子供の生活の質スケール、子供の絶望スケール、子供の家族機能、保護者のメンタルヘルススケール、感情表出は、2群間で有意差はありませんでした。
家族療法によって改善を認めた項目は(1)SDQ(=子どもの強さと困難さアンケート)(子供と保護者の両方)、(2)自殺企図ベックスケール(子供),(3)家族機能(保護者)、(4)子供と保護者の両者を考慮した場合の費用対効果、でした。
<コメント>
今回の結果からは、「子供と保護者の関係性の強み、絆を形成すること」にフォーカスした家族療法は、自傷行為そのものの対策としては、特別勧めるべきメリットを見出せない結果となったことは残念です。エディトリアルのオウグリン博士は、このネガティブな結果をもたらした理由として、(1)この研究で用いられた家族療法の時間も頻度も少なく、治療強度の低いものとみなされ、そもそもこの効果は期待されるものではなかった、(2)一次評価項目として自傷行為を病院受診の回数で客観的に評価しようとしたことは前向きに捉えられるが、現実的にはほとんどの自傷行為は、両親の知らないところで行われ、病院受診に至らないことから、不適切な指標である、といった手厳しい批判を浴びせています(文献4)。
一方で、2次評価項目では、SDQについて、子供と保護者の両者に良好な結果をもたらしたことは、前向きな評価がされています。
さて、費用対効果は現実的に大きな焦点であり、介入療法の良し悪しの決定因子でもあります。治療効果を上げるために、治療強度をあげれば、費用対効果は悪化することも踏まえ、今回の研究では、できるだけ治療強度を上げないように計画されていました。この点、費用対効果の視点では良好な結果となっていることは目論見どおりといえます。子どもの自殺企図のスケールは改善し、保護者の家族機能も改善している点は、前向きに捉えられるものです。オウグリン博士の指摘どおり、「治療強度の低さ」「アウトカムのとりかた」に議論の余地があるのは間違いないところでしょうし、今後、アウトカムをより現実に即したものに変え、治療頻度、治療時間を増やし、「家族療法」の有効性について、慎重な議論が続けられるべきでしょう。もちろん費用対効果も含め十分なアセスメントを要することでしょう。
保護者の子供への接し方にフォーカスし、家族機能を取り戻すことが、自傷行為の抑止につながるという一見当たり前とも思える治療法、この研究の発展に伴って、そもそも自傷行為がなぜ生じるのか、についての手がかりも得られるのではないか、と個人的には考えるところです。

(1)日本公衛誌 2012年9月15日、第59巻、第9号、665-773
(2)Cottrell, D. J., Wright-Hughes, A., Collinson, M., Boston, P., Eisler, I., Fortune, S., ... & Owens, D. W. (2018). Effectiveness of systemic family therapy versus treatment as usual for young people after self-harm: a pragmatic, phase 3, multicentre, randomised controlled trial. The Lancet Psychiatry, 5(3), 203-216.
(3)Kumpfer, K. L. (2014). Family-based interventions for the prevention of substance abuse and other impulse control disorders in girls. ISRN Addiction, 2014. Mar 3;2014:308789.
(4)Ougrin, D., & Asarnow, J. R. (2018). The end of family therapy for self-harm, or a new beginning?. The Lancet Psychiatry. 2018 Mar;5(3):188-189. doi: 10.1016/S2215-0366(18)30043-9.

2018/03/14

愛し野塾 第162回 非アルコール性脂肪性肝炎・新しい治療標的か


肝臓病の主たる疾患として注目されている「非アルコール性脂肪性肝疾患」とは、非アルコール性脂肪肝といった初期段階から、増悪化した非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)に至る疾患群です。 人間ドック受診者の推計から「非アルコール性脂肪肝」患者数は、1000万人から2000万人に及び、また「非アルコール性脂肪性肝炎」の患者数は、その約1割の100万人から200万人と推算されています。また、米国の報告では、NASHは、2020年には、肝臓移植を要する最も頻度の高い疾患になる、と予測されています。非アルコール性脂肪肝の診断には、1)お酒を飲まない、2)C型、B型肝炎がない、3)肝臓への脂肪沈着がある、4)脂肪肝をきたす他の病気がない、といった条件を満たす必要があります。また、単純な非アルコール性脂肪肝が、さらに進んだNASHに移行する原因として、インスリン抵抗性、脂質毒性、サイトカイン、酸化ストレス、そのほか炎症機転の関与が示唆されていますが、未だそのメカニズムの詳細は不明のままです。

NASH(非アルコール性脂肪性肝炎)の最大の問題は、肝硬変、肝癌に移行する可能性が高いことです。このため、早期の治療が望まれますが、現在、有効な治療法はありません。非アルコール性肝疾患の発症には、生活習慣の乱れや内臓肥満、ストレス、昼夜逆転の仕事などが関与していると考えられており、規則正しい生活、適正な体重コントロール、職場環境の改善によりストレスを減らすこと、などが推奨されています。この病気は、肥満、高血圧、脂質異常を併発していることが多く、「生活習慣の乱れ」が共通の原因として高頻度に認められます。脂肪肝を呈した肝細胞を、顕微鏡で観察すると、肝細胞のなかに油の粒がパンパンに溜まっているのが確認できます。

ご存知のように脂肪肝は、アルコール摂取によっても招来されます。ただし、アルコール摂取量、男性、1日量が30グラム(ビール大瓶一本くらい)、同じく女性、20グラム(中瓶一本)までならば、非アルコール性脂肪肝として診断されます。

最近の研究から、線維芽細胞増殖因子(FGF)と呼ばれる一群のホルモンのなかで、FGF19とFGF21は、脂質利用能の亢進や、肝臓の脂肪蓄積を抑制する作用があることが見出され、治療薬として使えるのではないかと期待されています。さて、脂肪肝発症には、胆汁酸の関与が大きく、肝臓に炎症と繊維化を惹起することが明らかにされています。FGF19は、P457A1を介して、コレステロールからの胆汁酸合成を阻害し、インスリン依存性の脂肪合成を阻害することから、治療薬として注目されていましたが、FGF19をトランスジェニックマウスの実験系で大量発現させた結果、肝臓癌形成を促進させることがわかり、残念ながら治療薬としては使えないことがわかりました。

そこで、肝臓癌誘発作用を持たず、胆汁酸合成阻害効果は維持しているリコンビナントFGF19 の合成が試みられました。試行錯誤の結果、P24-S28の5個のアミノ酸を欠失させ、N末端の3個のアミノ酸について、Ala30Ser、Gly31Ser、His33Leuに変異させたFGF19 (NGM282と命名)の合成に成功しました。

NGM282は、FGF19の受容体であるFGFR4を介したシグナルの中で、CYP7A1の活性抑制は保存され、すなわち胆汁酸合成は阻害できること、一方で、STAT3を介したシグナルは惹起されず肝癌形成促進作用を欠失する、という理想的なリコンビナントFGF-19として評価されました。また、NGM282のFGF19による肝癌形成作用に対する抑止効果を認め、より生体にとって都合の良い作用を有することも明らかにされました。非アルコール性脂肪性肝炎を呈する動物モデルにNGM282を投与した結果、肝機能(AST、ALT)の早期の改善、肝臓の病理解析から脂肪含有量の減少、および炎症、バルーン変性の抑止、繊維化の抑制作用を認めました。その後、健常人に投与し、高い安全性が確認され、肝臓のCYP7A1のバイオマーカーであるC4の血中濃度の低下も確認されました。そしていよいよ非アルコール性脂肪性肝炎患者に投与した結果が、2018年3月、「ランセット」に発表になりましたので解説します(1)。

<対象>
オーストラリアと米国の18の医療機関で、第2相のプラセボ対照の2重盲検試験が行われました。対象者は17-75歳、対象条件は、生検で確認された非アルコール性脂肪性肝炎(活動性スコア4以上)を有すること、MRI―PDEFで肝臓の脂肪含量が8%以上、ALTの上昇(男性が30以上、女性19以上)を示すこととしました。除外項目には、肝臓移植を受けたことがある人、過去6ヶ月以内の心血管イベントを有する人、肝硬変および1型糖尿病患者、非アルコール性脂肪性肝炎と無関係な急性あるいは慢性の肝疾患がある患者、としました。

対象者は3群、すなわち、1)1日に1回の3mgのNGM282 、2)1日に1回の6mgのNGM282、3)プラセボとして皮下注射群、に無作為に割り付けられました。12週間後に評価(1次評価項目は、MRI-PDFFで肝臓脂肪含有量が5%以上減少した割合。2次評価項目は、C4活性の低下、5%未満の肝臓脂肪含量の低下率、ALTの変化率)が行なわれました。

 <結果>
2015年から2016年の間に、166人の患者をスクリーニングした結果、82人が、3mg/日・NGM282投与群(27人)、6mg/日・NGM282投与群(28人)、プラセボ投与群(27人)の3群に割り付けられました。6mg投与群のうち2人は、肝脂肪量の再調査前の早期に試験中断に至り、失敗例と評価されました。3群の平均年齢は、52歳から56.8歳、女性が57%から74%でした。白人の割合が86%から93%、ALTは61-71、と、3群間に有意差はなく同様の特性を持つ集団であることが確認されました。

<1次評価項目 肝臓脂肪含有量の5%以上の低下>
肝臓脂肪含有量の5%以上の低下を認めたのは、それぞれ3mg投与群・74%、6mg投与群・79%、プラセボ群はわずか7%で、NMG282投与による有意な改善を認めました(いずれもP<0.0001)。肝臓脂肪含有量が完全に正常化したのは、3mg投与群・26%、6mg投与群・39%で、プラセボ群は0%でした。ポストホック解析を行った結果、肝臓脂肪含有量の改善に寄与する因子は、性別、人種、糖尿病罹患、BMI、ALT濃度、繊維化の程度、スタチン服用のいずれも関連がないことがわかりました。

<2次評価項目 C4活性の低下・5%未満の肝臓脂肪含量の低下率・ALTの変化率>
12週間後のALT値は、3mg投与群・-35.1U/I、6mg投与群・-36.5U/Iで、プラセボ投与群に比較していずれも有意な低下を認めました(いずれもP<0.0001)。ASTとC4も、3mg投与群、及び6mg投与群で低下を認めましたが、ALP値には変化がありませんでした。また、血清の繊維化のバイオマーカーであるproC3とELFスコアも、NMG282投与群でプラセボ群に比較して有意な改善を認めました。

<有害事象>
プラセボ群には中止症例はなく、NMG282投与3mg及び6mg両投与群、ともに11%の症例が有害事象を認め中止となりました。NMG282の両投与群で、肝臓の脂肪量が正常化した割合に比べても多くの方が、グレード2、あるいは3の有害事象(3mg投与群で48%、6mg投与群で50%)を経験しました。有害事象の多くは消化管障害で、下痢、腹痛、嘔吐でした。3mg投与群の1名は、膵炎を発症しました。

<血清脂質の変化>
中性脂肪、HDL―Cは、プラセボ群と比較して、NMG282投与で有意な変化はありませんでしたが、LDL―Cは、有意な上昇がありました(いずれの容量でもP<0.0001)

<コメント>
NMG282の肝臓脂肪を取り去る効果は、投与量の大小によらず、迅速かつ有意であり、脂肪含有量がわずか12週間で正常化した患者が、4分の1以上に達し、ALT値も投与後わずか1週間で有意に低下し、3分の1以上で正常化したことは、特筆に値する結果です。これまで非アルコール性脂肪性肝炎の治療薬が存在しなかった、ことから考えれば革命的な結果ではないか、と思うところです。しかし、薬剤服用を中止すれば4週間で投与前の状態に戻ってしまうことや、グレード2、3レベルの有害事象が半数近くに生じたこと、LDL-Cの有意な上昇を認めたことを無視することはできません。

非アルコール性脂肪性肝炎の発症は、肥満・メタボリック症候群などの慢性疾患が肝臓に反映した疾患である、という考え方が支配的です。この意味では、動脈硬化を亢進させる主たる要因の一つであるLDL-Cの増加について、長期的視野での観察・検討の必要性が議論されるでしょう。ただし、LDL-Cの増加が、small dense LDLではなく、large dense LDLによるものであること、またスタチン投与によるLDL-Cの産生抑制など、動脈硬化への影響は最小化できるもの、と考察され、うなづけるところです。

一方で、有害事象も、重篤ではないグレード2が大半で(3mg投与で41%、6mg投与で43%、プラセボ投与で15%)、重篤なグレード3は、比較的少ないものでした(3mg投与で7%、6mg投与で7%、プラセボ投与で4%)。この点は長期的視野に立った重篤な副作用の検証を注意深くする必要があると思います。有害事象のほとんどは、胆汁酸の産生減少による消化管運動機能の停滞に関連していることから、エディトリアルのコメント(2)では、「3mgあるいは6mgの投与を12週間以上続けて継続することは困難なのではないか」、という指摘は見逃せません。この研究を率いたハリソン博士もより低容量の投与によって有害事象を減らし、かつ有効性が維持されるのかどうか、検討が必要だと述べています。具体的には、NMG282をより長期に投与できるようにすること、そして、この肝臓脂肪を減少させる劇的な効果を維持できる投与量の適正化の検討が、重要な課題となることでしょう。

ところで糖尿病の発症スイッチとして注目されている「肝臓と膵臓への脂肪沈着の影響」という視点から、NMG282による劇的な肝臓への脂肪沈着の減少の他、膵臓の脂肪含有量に及ぼす影響についても気になるところです。また血糖管理プロフィールについては、12週間では大きな変化はなかったようですが、より長期の投与による血糖改善作用の有無についても興味があるところです。

さて、わずか12週間で肝脂肪が劇的に減少するNM282の登場は画期的です。だからこそ、投与量の適正化、より長期的な投与による、安全性を踏まえた効果について注意深く検証しなければなりません。長期的にも、肝硬変、肝癌が予防できたら、すばらしいことだと大きく期待させられた研究です。

文献
1)Harrison, S. A.ら(2018). NGM282 for treatment of non-alcoholic steatohepatitis: a multicentre, randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 2 trial. The Lancet. doi: 10.1016/S0140-6736(18)30474-4.

(2)Charlton, M. (05 March 2018). FGF-19 agonism for NASH: a short study of a long disease. The Lancet.

愛し野塾 第161回 前立腺がんの腫瘍の悪性化神経と血管新生の視点から

前立腺がんは、新規に診断される患者数は、1年あたり10万人中117.9人で、60歳以上で、急激に増加します。男性では、1位の胃がん、2位の大腸がん、3位の肺がんについで、罹患数の多いがんです。発見時にすでに骨転移している症例もあり、病期が進んでしまうと、治療にも難渋します。予防には「禁煙、節度ある飲酒、バランスの良い食事、適切な運動、体重コントロール、そして感染症予防」が効果的だといわれています。加えて、疫学調査から、降圧剤であるベータブロッカーが、前立腺がんの発症を予防し、かつ死亡率を下げることも報告されています。

さて、この「ベータブロッカーが前立腺がん予防に及ぼすメカニズムの詳細」を明らかにすれば、新しい治療ターゲットを発見できるかもしれません。この話題について昨今「科学誌サイエンス」(1)で報告された内容が医学誌「NEJM」(2)でまとめられましたので、解説します。

癌化の前段階では、細胞が増殖しその容積が増える「過形成」、いわゆる良性腫瘍が生じ、その後「血管新生」に発展すると、過形成された組織内に血管が新たに作られ、栄養及び液性因子などが効率よく運びこまれ、細胞の癌化を促します。「血管新生スイッチ」と呼ばれるこの過程には、「VEGF」など血管新生を促す液性因子の関与することがわかっています。この液性因子は、癌化を阻止する為に働いていた「血管新生阻害因子」の作用を凌駕し、細胞の癌化を促進するのです。

さて、創傷治癒時に生じる血管新生は、末しょう神経によって制御されること、また神経が血管新生を介して腫瘍形成を促すこと、交感神経の関与の可能性についても報告されています。今回の研究では、腫瘍形成に関わる神経の関与を明らかにする目的で、交感神経の神経伝達物質であるノルアドレナリンが結合し細胞内に作用するベータアドレナリン受容体の遺伝子をコンディショナルノックアウト(条件特異的遺伝子破壊)し、「血管新生スイッチ」が阻害されるのかどうか検討されました。

<研究>
免疫欠損マウス(Balb/c(nu/nu))にヒト前立腺癌細胞を移植した結果、18日後から急激な癌細胞の増殖が認められました。一方で、β2とβ3アドレナリン受容体を欠失させた変異体マウスでは、ヒト前立腺癌細胞の移植後18日目までは、野生株マウスと同程度の増殖を認めましたが、その後の急激な増殖は認めませんでした。18日目の細胞分析では、免疫欠損マウス及び、β受容体欠失マウスでも、癌の体積、組織の形態について、差異は認められませんでしたが、β受容体欠失マウスでは、腫瘍内血管の長さ、及び枝分かれの数の減少を認め、血管新生の有意な低下を認めました。この結果から、βアドレナリン受容体シグナルによる腫瘍血管新生作用、すなわち「血管新生スイッチ」機能を認め、このスイッチが、「低グレイド前立腺上皮内腫瘍(LPIN)」から、悪性度の高い「高グレイド前立腺上皮内腫瘍(HPIN)」へ誘導することも示唆されました。

次に、癌遺伝子である「MYC」を、プロバシンプロモーターの下流に挿入し、前立腺に大量に発現させたマウスモデルを用いました。発現後4週目に、腫瘍レベルはLPINに、また8週目にHPINに悪性化し、さらに24週目には、腺癌を形成し、その後、浸潤癌への進行が確認され、「ヒト前立腺癌の自然死の再現モデル動物」の作成に成功したことが確認されました。交感神経の発現をチロシンヒドロキシラーゼによる免疫組織染色を用いて、血管新生については、CD31抗体を用いて同定し、その結果、HPINで神経と血管の物理的な接合が増加していることがわかりました。HPIN組織内のノルアドレナリンの特異的な増加、血管内皮細胞でのβ2アドレナリン受容体の高頻度な発現が明らかになりました。

次に、「どの間質細胞のβ2アドレナリン受容体が、腫瘍の癌化に決定的な役割を果たしているのか」を検討するために、CREシステムによって血管内皮、ペリサイト、ミエロイド細胞のそれぞれ特異的に発現するβ2アドレナリン受容体をコンディショナルノックアウトにより欠失させた結果、LPINの段階で、ペリサイトあるいはミエロイド細胞特異的にβ2アドレナリン受容体を欠失させても、HPIN、及び腺ガンに進行した時期の腫瘍の重さには変わりはありませんでした。しかし、LPINの段階で、血管内皮細胞特異的にβ2アドレナリン受容体を欠失させたマウスでは、HPINへの移行が遅れ、12ヶ月間後までこの遅れが観察されました。その後、腫瘍を摘出し、血管組織を分析すると、血管の長さ、枝分かれの数が、野生型MYCマウスに比較して有意に減少していることが明らかとなりました(P<0.01)。この結果から、血管内皮細胞に存在するβ2アドレナリン受容体が、血管新生スイッチ遂行を司り、前立腺癌形成に決定的な役割を果たしていることが、示唆されました。

次に、血管内皮に存在するβ2アドレナリン受容体細胞内シグナルのどのコンポーネントが、血管新生スイッチを司っているのか、を検討する目的で、MYC野生型マウスと、血管内皮特異的にβ2アドレナリン受容体を欠失させたMYCマウスの、血管内皮細胞を、それぞれFACSを用いて選択的に取り出し、それらの「トランスクリプトーム」を比較しました。「遺伝子セット濃縮解析」から、β2アドレナリン受容体を欠失させた場合、「ミトコンドリアのチトクロームC」活性が有意に上昇している可能性が示唆されました。階級クラスター解析から、「BckdhaとCoa6」が突出して増えていることもわかりました。この結果から、血管新生スイッチにミトコンドリアの酸化的リン酸化の関与の可能性が示唆されました。

血管新生は主に好気的解糖によってATPを産生します。β2アドレナリン受容体のノックアウトにより血管新生が生じなくなるのは、血管内皮細胞内の酸化的リン酸化が高まるためです。そこで、チトクロームIVオキシダーゼ・アセンブリー・ファクターであるCox10をβ2アドレナリン受容体遺伝子と共に欠失させると、このCox10の追加欠失によってβ2アドレナリン受容体単独欠失した場合に生じる代謝シフトの阻害が生じ、前立腺がんの進行が再度生じるようになることがわかりました。

コメント

今回の実験結果によって、前立腺がんの進行には、神経を介した血管新生の促進が関与することが明らかになりました。この前立腺がん治療の新しいターゲット、そしてβブロッカーの有効性は、世界中の注目を集め、すでにはじまっているβブロッカーを用いた3つの前立腺がん治療の第二相臨床研究の結果が期待されるところです。また、今回の結果は、「神経の走行に沿うようにがん細胞が認められた場合、予後が悪い」という臨床データに基づく知見を裏付けるものとなりました。
前立腺がんは、男性では一生のうちに12%のかたが罹患するという、発症頻度の高いがんです。βブロッカーが前立腺がんの進行を阻止するだけなく、再発の抑止にも効果があるかどうか、今後、安全性を含め検討された上で、臨床応用されることが期待されます。

前立腺がんは、アンドロゲン作用によって増殖する症例が多いことから、抗アンドロゲン療法を主たる治療薬として用い、放射線療法や化学療法の追加について検討してゆきます。治療を続けるうちに、アンドロゲンに対して前立腺がんが耐性を示すようになることもしばしば生じ、βブロッカーが採用され、薬剤の選択肢の幅が広がることは大きな利益になるでしょう。

最近では、「神経が、がんの増殖に関与している」という概念は、胃がんや膵臓がんでも、見いだされてきました。この新しい概念である「神経制御によるがん細胞増殖の抑制」、この機序の解明によって、がん治療の飛躍が期待されます。

(1)Zahalka, A. H., Arnal-Estapé, A., Maryanovich, M., Nakahara, F., Cruz, C. D., Finley, L. W., & Frenette, P. S. (2017). Adrenergic nerves activate an angio-metabolic switch in prostate cancer. Science, 358(6361), 321-326.

(2)Chen, D., & Ayala, G. E. (2018). Innervating Prostate Cancer. New England Journal of Medicine, 378(7), 675-677.

2018/03/02

愛し野塾 第160回 ネットワークメタ解析を用いた抗うつ剤による治療効果の包括的検討



世界では、年間80万人が、「自殺」によって命を落とし、またこの原因として最も関係があるのが「うつ病」や「アルコール依存症」などのメンタル疾患であると言われています(WHO)。うつ病の特徴的な症状は、「気分の落ち込み」「興味の喪失」「不眠」「体重減少」「倦怠感」「焦燥」「無価値感」「希死念慮」「悲しい気持ちになる」「集中力の低下」などで、日本の統計では、患者数は、2008年に100万人を越えたと算出されている一方で、医師に受診しているのは4人に1人であり、受診をなさらない人も含めると、少なくとも300万人がうつ病で苦悩していると考えられています。重病などを理由としてうつ病を発症している方のほか、対人関係、職場環境、家庭生活におけるストレスが増えている現代社会を反映し、うつ病患者数は増加の一途をたどっています。

国際的な統計によると、地球上の全疾患の22.8%をメンタル疾患が占め、その中核をなすのが「うつ病」といわれ、3億5千万人がうつ病に罹患していると推測されています。1990年頃から罹患者数が増えて続けており、人口増加、高齢者人口増加が拍車をかけているとされます。

またアメリカ国内の統計から、うつ病にかかる医療費は20兆円を越え、そのうち45%が治療費や薬剤費などの「直接費用」、さらにメンタル疾患に特徴的に発生する「間接費用」として、自殺対策に5%、さらに病気によって生産性が低下することや、非就業費用など「労働にまつわる」コストが50%を占めています。

さらに社会経済的視点から、高齢化によって減少しつつある生産年齢層にうつ病罹患数は増加傾向を示している事実を踏まえ、一刻も早く、実効性のある対策として、有効な治療法の開発、自殺防止や社会的損失を食い止める医療・福祉、及び労働政策を企てる必要があります。現在、医療の観点から、主な治療法としては、精神療法、薬物療法があります。精神療法は有効な手段ですが、時間がかかること、人的な資源を要することから、効果は限定的です。従って、主たる治療としては、抗うつ剤によるものとなります。しかし、抗うつ剤は、個体差が大きく、短期的な効果がそれほど大きいものではないと考えられていること、長期的な効果はほとんど検討されていないことから、その服用にあたっては、敬遠されるかたも多いのが現状とされています。

今回、短期的な治療効果に絞って、21種類の抗うつ病薬について、「包括的に文献検索を行い、ネットワークメタ解析法」を行ったスタディーが「ランセット」に報告されましたので、解説します(1)。日常臨床で使われている抗うつ剤について、具体的にその効用や副作用がまとめられたことは画期的と評価され、BBCなどのメディアで大きく取り上げられました。日本からは京都大学が参加したこともあり、日本のメディアでも話題となりました。

<対象>
単剤による治療のみを施行されている18歳以上、かつ臨床試験で「2重盲検無作為割付法」が採用された患者を、調査対象としました。

「大うつ病」の診断は、DSM、ICD-10など標準法を用いたものとされました。薬の種類としては、米国、欧州、日本で認可されている、「アゴメラチン、ブプロピオン、シタロプラム、デュロキセチン(サインバルタ)、エスシタロプラム(レクサプロ), フルオキセチン フルボキサミン(デプロメール、ルボックス),ミルナシプラン(トレドミン), ミルタザピン(リフレックス)、レメロン ,パロキセチン(パキシル), レボキセチン, セルトラリン(ジェイゾロフト),ベンラファキシン(イフェクサー),ボルチオキセチンを対象としました。3環系抗うつ薬であるアミトリプチリン(トリプタノール), クロミプラミン(アナフラニール)、さらに、トラゾドン(レスリン、デジレル)、ネファゾドンも対象に加えられました。

<評価項目>
「有効性の評価」には、標準的評価項目が用いられ、「スコアが50%以上改善したもの」の割合としました。「有害項目の評価」として、理由のいかんにかかわらず「研究から離脱したもの」の割合としました。評価時点としては、研究開始後8週間あるいは、8週間後のデータがない場合、4-12週間後で8週間に一番近いポイントのデータとしました。

<結果>
データベース検索から条件に合致する臨床試験421件、論文化されていない研究結果あるいは製薬メーカーのウエブサイトからの検索86件、個人的に得た情報15件で、計522件の研究結果が対象とされました。1979年から2016年の間に、116,477人が参加、21種類の抗うつ薬とプラセボが比較されました。87,052人が抗うつ薬に割り付けられました。平均年齢44歳、62.3%が女性でした。89%の研究で用いられたHAM―D17の平均値は25.7で、中等症から重症の方が多く含まれる調査が行われました。

<プラセボとの比較試験>
「有効性」は、すべての薬剤でプラセボを上回っていました。プラセボと比較して、最も有効と評価されたのはハザード比2.13のアミトリプチリン(トリプタノール)でしたが、一方、最も低いのはハザード比1.37のレボキセチンでした。

有害性評価(試験からの離脱の比率)では、プラセボとの比較で、アゴメラチンが0.84と一番よい値を示し、フルオキセチンが0.88と続きました。クロミプラミン(アナフラニール)は、1.30とプラセボよりも悪い結果でした。

<薬剤同士の比較試験>

有効性評価では、アゴメラチン、アミトリプチリン(トリプタノール), エスシタロプラム(レクサプロ)ミルタザピン(リフレックス), パロキセチン(パキシル), ベンラファキシン(イフェクサー), ボルチオキセチンについて、有効性が高いことが判明しました。また、フルオキセチンフルボキサミン(デプロメール、ルボックス),レボキセチン、トラゾドン(レスリン、デジレル)は有効性が最も低い結果でした。安全性評価では、アゴメラチン、シタロプラム,  エスシタロプラム(レクサプロ)フルオキセチン、セルトラリン(ジェイゾロフ)、ボルチオキセチンが良好な成績を示し、アミトリプチリン(トリプタノール)クロミプラミン(アナフラニール), デュロキセチン(サインバルタ), フルボキサミン(デプロメール、ルボックス),レボキセチン, トラゾドン(レスリン、デジレル), ベンラファキシン(イフェクサー)が高いドロップアウト率でした。

<結論>
有効性と安全性の両面から考慮すると、第一選択薬として、「アゴメラチン、エスシタロプラム(レクサプロ)、ボルチオキセチン」が推奨され、「フルボキサミン(デプロメール、ルボックス)、レボキセチン, トラゾドン(レスリン、デジレル)」は推奨しにくいことが示されました。第一選択薬の効果が限定的な場合、安全性評価は低い一方で有効性は高い、「アミトリプチリン(トリプタノール), ベンラファキシン(イフェクサー)」も考慮されるでしょう。ただし、副作用には十分な注意を要するものと考えられます。

<コメント>
抗うつ薬の有効性が明確に示された今回の結果によって、患者さんと向き合う臨床医がひとまず安堵したことは間違いないところですし、多くのメディアでも専門家が口を揃えて、高く評価していることも頷けるところです。これまで使用されてきた治療薬が少なくともプラゼボに比較して抗うつ効果が明確に示されたことは患者やその家族にも安心をもたらしたと思います。

また、最初に使うべき薬剤がほぼ同定されたのもこの調査の利益でしょう。これまでは、多くの抗うつ剤がある中で、どれを最初に選択すべきか、という指標はありませんでした。同時に、最初に使用しないほうがいい、と考慮すべき薬も指摘できたことは朗報でしょう。

ただし、得られたデータはネットワーク解析による調査であることから、個々人の薬に対する効果と安全性を無視していること、効果が得られやすい患者、逆に副作用が現れやすい患者などの解析が不可能な点など、気をつけて当報告を評価しなければなりません。

さらに、これまでの報告で、デュロキセチン(サインバルタ)に対し効果を示す患者は76%、また24%は反応が得られない、とする報告がありますが、反応者と非反応者を見分けることは容易ではありません。うつ病の症状は多岐にわたり、「不安症状」「メランコリー」「非定型症状」を含め、これらの症状の違いを使って、薬の反応性を試算する試みもありましたが、成功には至りませんでした。

「どのような特徴を持つうつ病患者が、薬に反応しやすいのか、また、副作用が出やすいのか」、多くの臨床家が研究を進めてまいりました。しかし、著しい治療精度を上げる次の段階に進むには、症状から離れた「客観的指標」が必要でしょう。いわゆる「バイオマーカー」を検出すべく研究が進んでいます。昨年発表されたfMRIを使ったresting state functional connectivityがバイオマーカーとなるのではないかとする見解は有用とされています(2)。この指標を用いて、4つの病態に鬱病を分類することが可能となると示され、そのなかで、磁気刺激治療に反応する患者群が同定された結果は、大きなインパクトがありました。同じ手法を用いて、現在ある薬の効力と副作用が分類できるようになれば、うつ病治療には極めて有用になると思います。

今回の研究から、日常臨床で使われている抗うつ薬処方には意味があること、さらに、個々の薬剤に対する薬効と安全性に対する網羅的なデータが提示されたことから、臨床医ははじめてエビデンスを伴った処方が可能となった、といえるしょう。患者さんが正しい情報を知らされ、同意した上で服薬できるためにも有意義な調査報告であったと感じるところです。

文献
(1)Cipriani, A., Furukawa, T. A., Salanti, G., Chaimani, A., Atkinson, L. Z., Ogawa, Y., ... & Egger, M. (2018). Comparative efficacy and acceptability of 21 antidepressant drugs for the acute treatment of adults with major depressive disorder: a systematic review and network meta-analysis. The Lancet.

(2)Drysdale, A. T., Grosenick, L., Downar, J., Dunlop, K., Mansouri, F., Meng, Y., ... & Schatzberg, A. F. (2017). Resting-state connectivity biomarkers define neurophysiological subtypes of depression. Nature medicine, 23(1), 28.